「問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。
2017.04.08
興味深い研究成果をすべて熟考できればいいのですが、生憎時間が許しません。そこで、アブストラクトだけを読んだ、抑制的気質(行動抑制)に関する興味深い論文を軽く取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。
なぜ、抑制的気質なのかというと、場面緘黙児(選択性緘黙児)は抑制的気質が強いという仮説があるからです。なお、抑制的気質とはなんぞやという方は「行動抑制の概念 by Jerome Kagan」をご覧ください。特に、抑制的気質は社交不安障害(社会不安障害)のリスクを7.59倍高めるというメタ解析研究があります(Clauss et al., 2012)。
今回は親に行動抑制歴があると、抑制気質児の不安障害リスクが高いという研究です。
なお、抑制的気質以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。
最近の記事1⇒物ではなく経験をプレゼントした方が対人関係が良くなる
最近の記事2⇒数量限定広告は人を攻撃的にさせる
↑記事1:物を買うより経験を買う方が幸せになれるといわれますが、プレゼントの場合も経験をあげた方が良いという研究です。
記事2:「〇個限定販売!」という広告を見かけたら要注意。攻撃的になっちゃうかも、です。
Stumper, A., Danzig, A. P., Dyson, M. W., Olino, T. M., Carlson, G. A., & Klein, D. N. (2017). Parents' behavioral inhibition moderates association of preschoolers' BI with risk for age 9 anxiety disorders. Journal of Affective Disorders, 210, 35-42. doi:10.1016/j.jad.2016.12.008.
アメリカのストーニーブルック大学(ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校サンディエゴ医療センター、テンプル大学の研究者による論文です。
〇背景と目的
子供の頃の行動抑制気質は後の不安障害リスクとなります。しかしながら、抑制気質児の多くは不安障害を発症しません。このことは、抑制気質児が不安障害を発症するのに行動抑制以外の調整要因が絡んでくることを示唆します。そこで、本研究の目的は、調整要因の候補として、親の行動抑制歴を調べました。
〇方法
サンプルは地域社会から収集。子供392人とその親。
子供の頃の行動抑制は、3歳の時に実験室気質評価バッテリー(Laboratory Temperament Assessment Battery, Lab-TAB)による観察と行動抑制質問紙(Behavior Inhibition Questionnaire, BIQ)による親の報告で評定。
母親も父親も自分の子供の頃の行動抑制を回顧的行動抑制尺度(Retrospective Measure of Behavioral Inhibition,RMBI)で評価。
子供が9歳になった時に、片親と子供に感情障害・統合失調症キディスケジュール現在及び生涯版(Kiddie Schedule for Affective Disorders and Schizophrenia Present and Lifetime version,K-SADS-PL)による面接調査を実施。
参考記事⇒行動抑制を測る質問紙-場面緘黙症の研究に使ってほしい!
〇結果
親が子供の頃に自分の行動抑制が高かったと報告していると、子供が3歳の時に高い行動抑制を示していたら、9歳の時に不安障害の診断基準を満たす可能性が高まりました。この親自身の行動抑制歴の報告による調整効果は、3歳の行動抑制を観察で測ろうが、親に対する質問紙調査で測ろうが生じました。
〇コメント
行動抑制は不安障害、特に社交不安障害のリスクです。しかし、幼少期に行動抑制が高かったからと言って必ずしも不安障害になるとは限りません。今回は、親の子供時代の行動抑制歴が、抑制気質児が不安障害を発症するうえで重要な要因になるという論文です。
なぜ、抑制的気質なのかというと、場面緘黙児(選択性緘黙児)は抑制的気質が強いという仮説があるからです。なお、抑制的気質とはなんぞやという方は「行動抑制の概念 by Jerome Kagan」をご覧ください。特に、抑制的気質は社交不安障害(社会不安障害)のリスクを7.59倍高めるというメタ解析研究があります(Clauss et al., 2012)。
今回は親に行動抑制歴があると、抑制気質児の不安障害リスクが高いという研究です。
なお、抑制的気質以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。
最近の記事1⇒物ではなく経験をプレゼントした方が対人関係が良くなる
最近の記事2⇒数量限定広告は人を攻撃的にさせる
↑記事1:物を買うより経験を買う方が幸せになれるといわれますが、プレゼントの場合も経験をあげた方が良いという研究です。
記事2:「〇個限定販売!」という広告を見かけたら要注意。攻撃的になっちゃうかも、です。
Stumper, A., Danzig, A. P., Dyson, M. W., Olino, T. M., Carlson, G. A., & Klein, D. N. (2017). Parents' behavioral inhibition moderates association of preschoolers' BI with risk for age 9 anxiety disorders. Journal of Affective Disorders, 210, 35-42. doi:10.1016/j.jad.2016.12.008.
アメリカのストーニーブルック大学(ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校サンディエゴ医療センター、テンプル大学の研究者による論文です。
〇背景と目的
子供の頃の行動抑制気質は後の不安障害リスクとなります。しかしながら、抑制気質児の多くは不安障害を発症しません。このことは、抑制気質児が不安障害を発症するのに行動抑制以外の調整要因が絡んでくることを示唆します。そこで、本研究の目的は、調整要因の候補として、親の行動抑制歴を調べました。
〇方法
サンプルは地域社会から収集。子供392人とその親。
子供の頃の行動抑制は、3歳の時に実験室気質評価バッテリー(Laboratory Temperament Assessment Battery, Lab-TAB)による観察と行動抑制質問紙(Behavior Inhibition Questionnaire, BIQ)による親の報告で評定。
母親も父親も自分の子供の頃の行動抑制を回顧的行動抑制尺度(Retrospective Measure of Behavioral Inhibition,RMBI)で評価。
子供が9歳になった時に、片親と子供に感情障害・統合失調症キディスケジュール現在及び生涯版(Kiddie Schedule for Affective Disorders and Schizophrenia Present and Lifetime version,K-SADS-PL)による面接調査を実施。
参考記事⇒行動抑制を測る質問紙-場面緘黙症の研究に使ってほしい!
〇結果
親が子供の頃に自分の行動抑制が高かったと報告していると、子供が3歳の時に高い行動抑制を示していたら、9歳の時に不安障害の診断基準を満たす可能性が高まりました。この親自身の行動抑制歴の報告による調整効果は、3歳の行動抑制を観察で測ろうが、親に対する質問紙調査で測ろうが生じました。
〇コメント
行動抑制は不安障害、特に社交不安障害のリスクです。しかし、幼少期に行動抑制が高かったからと言って必ずしも不安障害になるとは限りません。今回は、親の子供時代の行動抑制歴が、抑制気質児が不安障害を発症するうえで重要な要因になるという論文です。
スポンサードリンク