行動抑制と社会的ひきこもり | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

Jerome Kagan 氏が提唱した「行動抑制」という概念。現時点では、行動抑制と場面緘黙症が関連している可能性も否定できないです。そこで、行動抑制に関する論文を調べていたところ、行動抑制と社会的ひきこもりの関連を指摘する論文を見つけてしまいました。それも今年(2010年)のものです。
↓下の論文がそれ。

P'erez-Edgar, K., Bar-Haim, Y., McDermott, J.M., Chronis-Tuscano, A., Pine, D.S., & Fox, N.A.(2010).
Attention biases to threat and behavioral inhibition in early childhood shape adolescent social withdrawal. Emotion,10,349-357.

↑上の論文は幼い頃の行動抑制が青年期(平均15歳)の社会的ひきこもりを誘発する可能性を示唆しています。ただし、それは行動抑制の傾向が低い統制群と比較して、注意が脅威となるものに大きく偏っている場合に現れたそうです。

もう一点個人的に興味深かったのは、この論文の序論で行動抑制の傾向がある9か月齢の乳児は新奇な聴覚刺激に対する感受性が高いと報告する研究が引用されていることです。私がこの引用論文に興味をもったのは、今回取り上げた論文の第2著者であるBar-Haim氏の研究との関係からです。Bar-Haim氏は緘黙症児の聴覚の感受性が高いとする独自の学説を展開しています。もし本当に、行動抑制傾向がある乳児と緘黙症児の両方に聴覚の感覚障害があるとすれば、行動抑制が緘黙症と関係するという説を支持する論拠の1つになりそうです。

なお、行動抑制と聴覚過敏性との関係を示す引用文献は以下のものです。孫引きですね(゜□゜lll;)

Marshall,P.J., Reeb,B.C., & Fox,N.A.(2009).Electrophysiological responses to audiory novelty in temperamentally different 9-month-old infants. Developmental science, 12,568-582.

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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