「問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。
2013.09.17
一部の人にとっては衝撃的なタイトルかもしれませんが、私は愛読している推理小説の影響なのか、まず初めに前提や主流となっている説、「事実」を疑うことから始めないと気が済まないたちです。
というわけで、今回は場面緘黙症の根底には抑制気質があるという説を疑います。
なお、行動抑制(抑制気質)に関する基本的事柄はこちらをご覧ください⇒行動抑制の概念 by Jerome Kagan
○素人が抑制気質の子どもとそうでない子どもを見分けるのは難しい
親や教師は行動抑制が高い子どもと行動抑制が低い子ども(ここでは保育園・幼稚園の園児)を見分けられません(Ballespí et al., 2012b)。また、親の評定と先生の評定が一致せず(相関係数は0.3)、研究者の観察と先生・親の評定も一致しません(Ballespí et al., 2012b)。
以上の結果はたとえ行動抑制が極端に強い園児を選んでも変わりません。ゆえに、もしも「大半の場面緘黙児には抑制気質がある」という主張が親や教師によるものだとしたら、信頼性が低い論説です。
たとえ臨床家が場面緘黙症の子には抑制気質持ちの人が多いなと感じていたとしても、ほとんどの臨床家は行動抑制のエキスパートではないでしょうから、それもどれだけ信頼できるのか怪しいものです。
こういうことを書くと、マーキュリー2世という輩は場面緘黙児は抑制気質が強いという説に反対していると誤解する方も出てくると思います。ですが、別に場面緘黙症の「抑制気質説」を否定しているわけではありません。
ただ、場面緘黙症と行動抑制の関係を調べた研究がない以上は「抑制気質説」を肯定することもできなければ、否定することもできないと考えているだけです。それが純粋な科学的態度というものです。
もっとも、最近では親や教師が評定者でも信頼性・妥当性が確保できるような行動抑制尺度の開発がなされています。たとえば、Behavioral Inhibition Scale 3-6 (BIS 3-6)という尺度を開発している研究グループがいて…というか、親や教師の報告があてにならないという論文と著者が全く同じです(スペインのバルセロナ自治大学の研究チーム)。
まあ、とにかくBIS 3-6は親や教師が質問紙に回答する形式です。ただそれでも、臨床家や研究者との相関係数は 0.2 ~0.6で、一致度が低いのが実情です(Ballespí et al., 2012a)。
しかし、BIS 3-6では極端な抑制気質児なら判別できる、と要約にあります。これは親や教師の報告があてにならないという論文と正反対です。もっとも、どれぐらいの精度かは本文を読まないことには分かりません。
いずれにせよ、場面緘黙児に行動抑制が高い子が多いとの意見を裏付けるためには行動抑制の専門家と場面緘黙症の専門家がタッグを組み、協力して研究しなければなりません。
○引用文献(要約だけ読みました、お許し下さい)
Ballespí, S., Jané, M. C., & Riba, M. D. (2012a). The Behavioural Inhibition Scale for Children Aged 3 to 6 (BIS 3-6): Validity Based on Its Relation with Observational Measures. Journal of Psychopathology and Behavioral Assessment, 34(4), 487-496.
Ballespí, S., Jané, M. C., & Riba, M. D. (2012b). Who Should Report Abnormal Behavior at Preschool Age? The Case of Behavioral Inhibition. Child Psychiatry & Human Development, 43(1), 48-69.
というわけで、今回は場面緘黙症の根底には抑制気質があるという説を疑います。
なお、行動抑制(抑制気質)に関する基本的事柄はこちらをご覧ください⇒行動抑制の概念 by Jerome Kagan
○素人が抑制気質の子どもとそうでない子どもを見分けるのは難しい
親や教師は行動抑制が高い子どもと行動抑制が低い子ども(ここでは保育園・幼稚園の園児)を見分けられません(Ballespí et al., 2012b)。また、親の評定と先生の評定が一致せず(相関係数は0.3)、研究者の観察と先生・親の評定も一致しません(Ballespí et al., 2012b)。
以上の結果はたとえ行動抑制が極端に強い園児を選んでも変わりません。ゆえに、もしも「大半の場面緘黙児には抑制気質がある」という主張が親や教師によるものだとしたら、信頼性が低い論説です。
たとえ臨床家が場面緘黙症の子には抑制気質持ちの人が多いなと感じていたとしても、ほとんどの臨床家は行動抑制のエキスパートではないでしょうから、それもどれだけ信頼できるのか怪しいものです。
こういうことを書くと、マーキュリー2世という輩は場面緘黙児は抑制気質が強いという説に反対していると誤解する方も出てくると思います。ですが、別に場面緘黙症の「抑制気質説」を否定しているわけではありません。
ただ、場面緘黙症と行動抑制の関係を調べた研究がない以上は「抑制気質説」を肯定することもできなければ、否定することもできないと考えているだけです。それが純粋な科学的態度というものです。
もっとも、最近では親や教師が評定者でも信頼性・妥当性が確保できるような行動抑制尺度の開発がなされています。たとえば、Behavioral Inhibition Scale 3-6 (BIS 3-6)という尺度を開発している研究グループがいて…というか、親や教師の報告があてにならないという論文と著者が全く同じです(スペインのバルセロナ自治大学の研究チーム)。
まあ、とにかくBIS 3-6は親や教師が質問紙に回答する形式です。ただそれでも、臨床家や研究者との相関係数は 0.2 ~0.6で、一致度が低いのが実情です(Ballespí et al., 2012a)。
しかし、BIS 3-6では極端な抑制気質児なら判別できる、と要約にあります。これは親や教師の報告があてにならないという論文と正反対です。もっとも、どれぐらいの精度かは本文を読まないことには分かりません。
いずれにせよ、場面緘黙児に行動抑制が高い子が多いとの意見を裏付けるためには行動抑制の専門家と場面緘黙症の専門家がタッグを組み、協力して研究しなければなりません。
○引用文献(要約だけ読みました、お許し下さい)
Ballespí, S., Jané, M. C., & Riba, M. D. (2012a). The Behavioural Inhibition Scale for Children Aged 3 to 6 (BIS 3-6): Validity Based on Its Relation with Observational Measures. Journal of Psychopathology and Behavioral Assessment, 34(4), 487-496.
Ballespí, S., Jané, M. C., & Riba, M. D. (2012b). Who Should Report Abnormal Behavior at Preschool Age? The Case of Behavioral Inhibition. Child Psychiatry & Human Development, 43(1), 48-69.
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