「問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。
2021.11.01
興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、論文アブストラクト(抄録)だけ読んだ扁桃体に関する興味深い研究を取り上げます。
なぜ、扁桃体なのかといえば、不安・恐怖に関連する脳領域として話題になることが多い脳部位だからです。ただし、「扁桃体には不安・恐怖を抑制する機能もある」という指摘や「扁桃体損傷患者でも不安、恐怖等の感情を感じる」との研究もあることに留意しなければなりません。
今回は、光で扁桃体の活動が抑制されるという内容の論文です。
なお、扁桃体以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。
新ブログ『心理学・脳科学・動物行動学アブストラクト』も設立したので、時間があればのぞいてやってください(参考記事⇒新ブログ『心理学・脳科学・動物行動学アブストラクト』開設のお知らせ)。
最近の記事1⇒乳児期は泣き声や笑い声よりも発話に似た声を出すことが多い
最近の記事2⇒論文出版が多すぎると、科学は進展するどころか停滞する
最近の記事3⇒突然の音信不通で人間関係を終わらせたことのある人はマキャヴェリズムやサイコパシーが高い
最近の記事4⇒幸運の女神のように運を擬人化すると、経済的決定がリスキーになる
McGlashan, E. M., Poudel, G. R., Jamadar, S. D., Phillips, A. J. K., & Cain, S. W. (2021). Afraid of the dark: Light acutely suppresses activity in the human amygdala. PLoS ONE, 16(6): e0252350. doi: 10.1371/journal.pone.0252350
オーストラリアのモナシュ大学心理科学部ターナー脳精神衛生研究所、オーストラリアカトリック大学メアリー・マッキロップ衛生研究所の研究者による論文です。
〇序論
光を浴びると気分が向上します。
扁桃体は恐怖関連の応答を含め、情動の調整に重要な役割を果たします。
齧歯類の扁桃体は網膜から直接、光のインプットを受けます。また、ネズミでは光が恐怖関連の学習に関与しています。
ヒトで光を浴びると気分が向上する効果がでるのは、光が扁桃体に直接効果を及ぼしていることが考えられます。しかし、ヒトにおける光の扁桃体活動への効果については、知見が不足しています。
〇目的と方法
以上の研究の現状を受けて、健康な若年成人で、薄暗い白色光または中程度の明るさの白色光への受動的暴露が扁桃体活動に与える影響を検討。
参加者は23人。fMRI(機能的磁気共鳴画像法)で計測したBOLD応答を解析。
用いた光強度は10 luxと100 luxの2通り。この2種類の光のいずれかと1 lux未満の暗闇への暴露を30秒のブロックで交互に参加者に与えました。その際に、各照明強度は別々に提示。
〇結果
fMRI実験の結果、暗闇の場合よりも光に暴露された方が、扁桃体の活動が抑制されました。
照明強度の違いの効果を分析したところ、薄暗い光よりも中程度の明るさの光に暴露された方が、扁桃体活動の減少の程度が大きくなりました。
また、暗闇よりも照明に暴露された方が、扁桃体と腹内側前頭前皮質との間の機能的結合が強くなっていました。
〇考察
研究チームは、光が扁桃体活動やその他の脳領域との機能的結合に与える上記のような効果が、ネガティブな恐怖関連感情の減退やネガティブ情動の(消去による)処理の増強を通して、光暴露の気分向上効果に寄与したと議論しています。
関連研究⇒夜に恐怖が強まるのは暗いからではない
関連研究⇒暗闇で状態不安が高い人は怒り顔の再認記憶が苦手になる
なぜ、扁桃体なのかといえば、不安・恐怖に関連する脳領域として話題になることが多い脳部位だからです。ただし、「扁桃体には不安・恐怖を抑制する機能もある」という指摘や「扁桃体損傷患者でも不安、恐怖等の感情を感じる」との研究もあることに留意しなければなりません。
今回は、光で扁桃体の活動が抑制されるという内容の論文です。
なお、扁桃体以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。
新ブログ『心理学・脳科学・動物行動学アブストラクト』も設立したので、時間があればのぞいてやってください(参考記事⇒新ブログ『心理学・脳科学・動物行動学アブストラクト』開設のお知らせ)。
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McGlashan, E. M., Poudel, G. R., Jamadar, S. D., Phillips, A. J. K., & Cain, S. W. (2021). Afraid of the dark: Light acutely suppresses activity in the human amygdala. PLoS ONE, 16(6): e0252350. doi: 10.1371/journal.pone.0252350
オーストラリアのモナシュ大学心理科学部ターナー脳精神衛生研究所、オーストラリアカトリック大学メアリー・マッキロップ衛生研究所の研究者による論文です。
〇序論
光を浴びると気分が向上します。
扁桃体は恐怖関連の応答を含め、情動の調整に重要な役割を果たします。
齧歯類の扁桃体は網膜から直接、光のインプットを受けます。また、ネズミでは光が恐怖関連の学習に関与しています。
ヒトで光を浴びると気分が向上する効果がでるのは、光が扁桃体に直接効果を及ぼしていることが考えられます。しかし、ヒトにおける光の扁桃体活動への効果については、知見が不足しています。
〇目的と方法
以上の研究の現状を受けて、健康な若年成人で、薄暗い白色光または中程度の明るさの白色光への受動的暴露が扁桃体活動に与える影響を検討。
参加者は23人。fMRI(機能的磁気共鳴画像法)で計測したBOLD応答を解析。
用いた光強度は10 luxと100 luxの2通り。この2種類の光のいずれかと1 lux未満の暗闇への暴露を30秒のブロックで交互に参加者に与えました。その際に、各照明強度は別々に提示。
〇結果
fMRI実験の結果、暗闇の場合よりも光に暴露された方が、扁桃体の活動が抑制されました。
照明強度の違いの効果を分析したところ、薄暗い光よりも中程度の明るさの光に暴露された方が、扁桃体活動の減少の程度が大きくなりました。
また、暗闇よりも照明に暴露された方が、扁桃体と腹内側前頭前皮質との間の機能的結合が強くなっていました。
〇考察
研究チームは、光が扁桃体活動やその他の脳領域との機能的結合に与える上記のような効果が、ネガティブな恐怖関連感情の減退やネガティブ情動の(消去による)処理の増強を通して、光暴露の気分向上効果に寄与したと議論しています。
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