不安研究(その他) | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

動物ではフリージングといって捕食者などの脅威にさらされると、身体が硬直する反応が起きます。心拍数も低下します。フリージングは防御反応の一種です。

場面緘黙症でも緘動といって身体が固まって動けなくなることがありますから、人間でもフリージングが生じそうです。事実、今回扱う論文に引用されている文献によれば、人間でも手足が切断された身体(mutilated body)などの写真を見るとフリージングがおこるそうです(身体的脅威に対するフリージング反応)。

しかし、社会的に脅威な刺激でフリージングが生じるかどうかは謎でした。今回の論文は、人間でも怒った顔を見るとフリージングが生じ、不安が高い人ほど身体が硬直するというお話です。

なお、今回の論文以外の研究に関しては「緘黙人の緘動-フリージングの心理学研究より」をご覧ください。

Roelofs, K., Hagenaars, M. A., & Stins, J. (2010). Facing freeze:Social threat induces bodily freeze in humans. Psychological Science, 21(11), 1575-1581. doi:10.1177/0956797610384746.

★概要

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心理言語学ではGanong effect(ギャノング効果)という現象が知られています。

Ganong effectとはシラブル(音節)の語彙知識が音素の知覚に影響することです。たとえば、gift-kiftの連続体ならgと聞こえやすく、giss-kissの連続体ならkと聞こえやすいのです。連続体とは、はっきりしたgの発音とはっきりしたkの発音の間にいくつかの段階を設けて、明瞭な発音と曖昧な発音の両方を刺激としたもののことです。

Ganong effectにより、lexical driftという現象が生じます。lexical driftとは聞き手が話し言葉の音響的特性を無視し、スピーチの内容から聞こえてきた単語を語彙知識から推測する傾向のことです。先行研究では注意の分散でlexical driftが生じることが示されています。

*注意:私には音韻と音素の違いが分かりませんから、同義として扱います。

ところで、7.5%のCO2(二酸化炭素)を吸引すると、健常者でも不安が高まることが知られています。7.5%のCO2吸引は全般性不安障害のモデルとして抗不安薬の効果の検証のために、使用されることもあります。また、7.5%のCO2吸引はネガティブ写真への注意に影響します。

参考記事⇒7.5%濃度の二酸化炭素を吸い不安になると、ネガティブ写真に敏感になる

そして、7.5%のCO2を吸引し、不安を高めると、音素の弁別が苦手になり、Ganong effectが生じやすいという論文が2013年に公刊されました。つまり、CO2による不安の高まりで話し言葉を直に理解することが苦手になり、辞書的知識を用いる傾向が強まるというのです。

*注意:35%のCO2吸引でパニック状態が健常者でも生じることが知られていますが、これは7.5%のCO2吸引による不安とは異なります。35%のCO2吸引実験に関しては以下の参考記事をご覧ください。

参考記事⇒CO2吸引によるパニック発作、恐怖に扁桃体は必要ない

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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