「問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。
2021.07.06
シャイネス研究シリーズです。
今回は大人が知らない子の顔からシャイネスを判断するのは難しいという研究をとりあげます。
なお、シャイネス以外の心理学研究については、別の拙ブログ『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。
↓『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』の最近の記事一覧
・他者の痛みの観察で罪悪感が減る
・州知事が女性だと新型コロナウイルス感染症による死亡リスクが低い
・子供の幸運概念の発達経過
・礼拝に出席することが多い米国人は猫を飼っていることが少ない
Collova, J. R., Sutherland, C. A., Jeffery, L., Bothe, E., & Rhodes, G. (2020). Adults’ facial impressions of children’s niceness, but not shyness, show modest accuracy. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 73(12), 2328–2347. doi: 10.1177/1747021820957575
今回は大人が知らない子の顔からシャイネスを判断するのは難しいという研究をとりあげます。
なお、シャイネス以外の心理学研究については、別の拙ブログ『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。
↓『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』の最近の記事一覧
・他者の痛みの観察で罪悪感が減る
・州知事が女性だと新型コロナウイルス感染症による死亡リスクが低い
・子供の幸運概念の発達経過
・礼拝に出席することが多い米国人は猫を飼っていることが少ない
Collova, J. R., Sutherland, C. A., Jeffery, L., Bothe, E., & Rhodes, G. (2020). Adults’ facial impressions of children’s niceness, but not shyness, show modest accuracy. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 73(12), 2328–2347. doi: 10.1177/1747021820957575
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2015.06.12
1980年代にはすでにシャイネスと社交性は関連性はあるものの、シャイだからといって社交性が低いとは限らないことが示唆されていました。つまり、シャイな人にも社交性が高い人や社交性が低い人が存在するわけです(抽象的に書くと、シャイネスと社交性は独立しているという表現になります)。この知見は1980年代以降でも数々の研究で繰り返し示されてきた再現性の高い結果です。
ドイツのフンボルト大学ベルリンの心理学者、ジェンス・アセンドルフ教授(Prof. Jens B. Asendorpf)の以下の図式が比較的有名でしょうか。
Matsuda et al. (2013)によると、この図式は以下の文献によります(←孫引き)。また、マックマスター大学心理学のルイス・A. シュミット助教授(現在は教授)とジョージタウン大学のジェイ・シュルキン教授(生理学/生物物理学)が編集した『Extreme Fear, Shyness, and Social Phobia (Series in Affective Science)
(オックスフォード大学出版局)』という本にもこの図式が登場します(なお、この本は『社会不安障害とシャイネス―発達心理学と神経科学的アプローチ
』という翻訳書が日本評論社から出版されています)。
・Asendorpf, J. B. (1990). Beyond social withdrawal: Shyness, unsociability, and peer avoidance. Human Development, 33(4-5), 250-259. doi:10.1159/000276522.
・Asendorpf, J. B. (1990). Development of inhibition during childhood: Evidence for situational specificity and a two-factor model. Developmental Psychology, 26(5), 721-730. doi:10.1037/0012-1649.26.5.721.
シャイネス(社会的回避動機づけ)×社交性(社会的接近動機づけ)の4類型はそれぞれリスクの高い精神病理が異なっているとされます。不安リスクが高いのはシャイネスと社交性がともに高い葛藤型です。これは不安が接近と回避の葛藤に起因するからと考えられています。今回取り上げる論文の序論によれば、物質使用や物質乱用のリスクが高いのも葛藤型で、抑うつや孤独感のリスクが高いのは回避型(シャイネスが高いが、社交性が低いタイプ)だそうです。
しかし、神経生物学的、脳科学的にシャイネスと社交性という2次元の性格特性の特徴がどの程度分かっているかというと、まだまだ未解明なことが多いそうです。特にコルチゾールの結果は一貫していません。このような現状にかんがみ、シャイネスと社交性の神経生物学的調査が実施されました。
*シャイネスの日本語訳は何が良いのかは難しい問題です。私が少し調べただけでも、内気、恥ずかしがりや、照れ屋、はにかみ屋、人見知り、引っ込み思案といった訳語が出てきます。果たしてどの邦訳が良いのか分からないため、ここでは単にシャイネスと表記します。ネバダ大学ラスベガス校のクリストファー・A・カーニー教授著で立教大学現代心理学部の大石幸二教授監訳の『親子でできる引っ込み思案な子どもの支援(学苑社)』ではシャイネスの日本語訳に「極度の引っ込み思案」というものを当てていますが、研究分野や文脈の微妙な違いによって適切な邦訳が異なると考えられるので、本記事では「極度の引っ込み思案」という訳語は採用しません。
ドイツのフンボルト大学ベルリンの心理学者、ジェンス・アセンドルフ教授(Prof. Jens B. Asendorpf)の以下の図式が比較的有名でしょうか。
シャイネス(回避) | |||
社交性(接近) | 高い | 低い | |
高い | 葛藤 | 社交的 | |
低い | 回避的 | 内向的 |
Matsuda et al. (2013)によると、この図式は以下の文献によります(←孫引き)。また、マックマスター大学心理学のルイス・A. シュミット助教授(現在は教授)とジョージタウン大学のジェイ・シュルキン教授(生理学/生物物理学)が編集した『Extreme Fear, Shyness, and Social Phobia (Series in Affective Science)
・Asendorpf, J. B. (1990). Beyond social withdrawal: Shyness, unsociability, and peer avoidance. Human Development, 33(4-5), 250-259. doi:10.1159/000276522.
・Asendorpf, J. B. (1990). Development of inhibition during childhood: Evidence for situational specificity and a two-factor model. Developmental Psychology, 26(5), 721-730. doi:10.1037/0012-1649.26.5.721.
シャイネス(社会的回避動機づけ)×社交性(社会的接近動機づけ)の4類型はそれぞれリスクの高い精神病理が異なっているとされます。不安リスクが高いのはシャイネスと社交性がともに高い葛藤型です。これは不安が接近と回避の葛藤に起因するからと考えられています。今回取り上げる論文の序論によれば、物質使用や物質乱用のリスクが高いのも葛藤型で、抑うつや孤独感のリスクが高いのは回避型(シャイネスが高いが、社交性が低いタイプ)だそうです。
しかし、神経生物学的、脳科学的にシャイネスと社交性という2次元の性格特性の特徴がどの程度分かっているかというと、まだまだ未解明なことが多いそうです。特にコルチゾールの結果は一貫していません。このような現状にかんがみ、シャイネスと社交性の神経生物学的調査が実施されました。
*シャイネスの日本語訳は何が良いのかは難しい問題です。私が少し調べただけでも、内気、恥ずかしがりや、照れ屋、はにかみ屋、人見知り、引っ込み思案といった訳語が出てきます。果たしてどの邦訳が良いのか分からないため、ここでは単にシャイネスと表記します。ネバダ大学ラスベガス校のクリストファー・A・カーニー教授著で立教大学現代心理学部の大石幸二教授監訳の『親子でできる引っ込み思案な子どもの支援(学苑社)』ではシャイネスの日本語訳に「極度の引っ込み思案」というものを当てていますが、研究分野や文脈の微妙な違いによって適切な邦訳が異なると考えられるので、本記事では「極度の引っ込み思案」という訳語は採用しません。
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2013.06.24
シャイネスと社会不安(障害)は違います。と偉そうなことをいっても私には具体的にどう違うのか分からないのですが、少なくともアメリカでは違うんです。
たとえば、1万人以上の若者(13-18歳)を対象にしたNIMH(アメリカ国立精神衛生研究所)の調査(参考URL参照)によれば、約半数の回答者がシャイだと認めたものの、その中で社会不安障害に当てはまったのは12%にすぎないそうです。さらに、シャイでなくても社会不安障害の方が5%いたといいます。社会不安障害の患者はうつ病や物質使用障害など他の障害との合併率がシャイな人よりも高いとの結果も得られています。
どうやら、シャイネスと社会不安の違いは脳構造や安静時の脳活動にも生じているらしいぞという論文が今年発表されました。これはシャイネスと社会不安の脳が違うことを示唆した世界初の業績です。研究グループは中国の四川大学華西医院と電子科技大学生命科学技術学部の人達です。
本論文でもシャイネスと社会不安の相関係数は0.376と弱く、完全に同じ概念ではないことが窺われます。なお、特性不安と社会不安の相関係数は0.622でした。
ただし、今回は社会不安障害ではなく、健常者における社会不安です。
Yang, X., Kendrick, K. M., Wu, Q., Chen, T., Lama, S., Cheng, B., Li, S., Huang, X., & Gong, Q. (2013). Structural and Functional Connectivity Changes in the Brain Associated with Shyness but Not with Social Anxiety. PLoS One, 8(5):e63151, doi:10.1371/journal.pone.0063151.
★概要
たとえば、1万人以上の若者(13-18歳)を対象にしたNIMH(アメリカ国立精神衛生研究所)の調査(参考URL参照)によれば、約半数の回答者がシャイだと認めたものの、その中で社会不安障害に当てはまったのは12%にすぎないそうです。さらに、シャイでなくても社会不安障害の方が5%いたといいます。社会不安障害の患者はうつ病や物質使用障害など他の障害との合併率がシャイな人よりも高いとの結果も得られています。
どうやら、シャイネスと社会不安の違いは脳構造や安静時の脳活動にも生じているらしいぞという論文が今年発表されました。これはシャイネスと社会不安の脳が違うことを示唆した世界初の業績です。研究グループは中国の四川大学華西医院と電子科技大学生命科学技術学部の人達です。
本論文でもシャイネスと社会不安の相関係数は0.376と弱く、完全に同じ概念ではないことが窺われます。なお、特性不安と社会不安の相関係数は0.622でした。
ただし、今回は社会不安障害ではなく、健常者における社会不安です。
Yang, X., Kendrick, K. M., Wu, Q., Chen, T., Lama, S., Cheng, B., Li, S., Huang, X., & Gong, Q. (2013). Structural and Functional Connectivity Changes in the Brain Associated with Shyness but Not with Social Anxiety. PLoS One, 8(5):e63151, doi:10.1371/journal.pone.0063151.
★概要
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