行動抑制とは?(基礎・基本) | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

発達心理学者で気質研究でも知られるJerome Kagan氏が2021年5月10日に逝去されました。享年92歳でした。ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)などが報じています。

Kagan氏はハーバード大学の名誉教授で、場面緘黙症でも「行動抑制」の研究の観点から、理論的(といっていいのかどうかわかりませんが)な貢献を果たしました。場面緘黙症における抑制気質の役割はこれまで単なる仮説でしかありませんでしたが、近年では「健常発達児の場面緘黙傾向、抑制的気質、(社交)不安」という記事で取り上げた研究のように、緘黙と行動抑制との関連を調べる研究がでてきています。今後の研究の進展が待たれるところです。

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ハーバード大学のJerome Kagan教授が提唱した行動抑制。

行動抑制とは見知らぬ人や音、物に近づかない傾向のことで、抑制気質ともよばれます。

抑制気質は社交不安障害(社会不安障害)のリスク因子です。ヴァンダービルト大学医学部が行ったメタ分析によれば、乳幼児期の行動抑制は社交不安障害のリスクを7.59倍高めます(Clauss et al., 2012)。

メタ分析とは複数の研究を同時に分析する研究手法のことです。

なお、行動抑制に関する基本事項はこちらを参照してください⇒行動抑制の概念 by Jerome Kagan

ところが、抑制気質がリスクとなるのは何も社交不安障害だけではありません。パニック障害、広場恐怖症、回避性障害、分離不安障害のリスクであるのはもちろんのこと、うつ病や自殺企図、物質使用問題、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のリスクでもあるのです。

そして、2013年には行動抑制が吃音のリスク要因であるとの研究も発表されました。

*「本当に場面緘黙児は抑制気質なのか?」で述べたように2013年現在、場面緘黙症と抑制気質に関する研究が発表されていません。それにもかかわらず、場面緘黙児は行動が抑制されているとの考えが既成事実化しつつあります。これは人間が持つ確証バイアス(Confirmation bias)を考えると、憂慮すべき事態です。

なお、確証バイアスとは自分の考え(信念)にあった情報を探し、信念に反した情報を探さない、あるいは過小評価するバイアスのことです。

○抑制気質になりやすいのはパニック障害、うつ病の親の子

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行動抑制の検査は約9か月齢以降の乳幼児や小学生を、検査者が観察して判断するというものが多いです。しかし、それでは労力や時間がかかるので、研究が進展していない場面緘黙症の場合、待ち遠しいことこの上ないでしょう。

このジレンマを解決するのに質問紙調査という方法があります。

そこで、抑制気質を計測する際に利用できる質問票を集めてみました。おそらく、これほどまでに抑制気質質問票を寄せ集めたサイトはほとんどないと思います。

特に場面緘黙症と抑制気質の関わりを推す人にとっては避けて通れない質問紙・尺度群です。臨床家が使える尺度にも言及しているので、臨床現場で使いたい方にもおすすめです。

なお、行動抑制(抑制気質)の基本的事項についてはこちらをご覧ください⇒行動抑制の概念 by Jerome Kagan

○古典的な質問紙は自己報告(成人向け)

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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