行動抑制の論文 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

交流相手が道徳的に良い人なのか悪い人なのかよく分からない場合、抑制的気質が高い大学生は自己報告上は相手に感じる信頼度は特段低くないが、行動レベルでは相手を信頼していないという結果が得られた論文を読みました。

なお、抑制的気質(行動抑制)とは、新奇な人や物、状況を警戒し回避する気質傾向のことです。基本的なことは「行動抑制の概念 by Jerome Kagan」という記事を参考にしてください。抑制的気質は社交不安障害(社会不安障害)のリスクを7.59倍高めるというメタ解析研究があります(Clauss et al., 2012)。また、行動抑制は過剰不安障害(全般性不安障害)や恐怖症、回避性障害、分離不安障害、うつ病、自殺企図、アルコール問題、薬物使用問題、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のリスクを高めるという研究もあります。

Radell, M. L., Sanchez, R., Weinflash, N., & Myers, C. E. (2016). The personality trait of behavioral inhibition modulates perceptions of moral character and performance during the trust game: behavioral results and computational modeling. PeerJ, 4:e1631. doi:10.7717/peerj.1631.

★概要

〇目的

本研究の目的は、行動抑制という性格特性が、相手に感じる信頼レベルや信頼ゲームでの意思決定に与える影響を調べることとしました。

○方法

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行動抑制(behavioral inhibition)が強い子供は新規で馴れていない物や人、状況に対して接近しようとせず、傍観する傾向にあります。メタ分析研究によれば、行動抑制は社会不安障害(社交不安障害,社交不安症)のリスクを7.59倍高めます(Clauss et al., 2012)。また、行動抑制は過剰不安障害(全般性不安障害)や恐怖症、回避性障害、分離不安障害、うつ病、自殺企図、アルコール問題、薬物使用問題、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のリスクであるという研究もあります。

*行動抑制(抑制的気質)とはハーバード大学のJerome Kagan名誉教授が発見した気質のことです。詳しくはこちらをご覧ください⇒行動抑制の概念 by Jerome Kagan

*Clauss et al.(2012)とは以下の文献のことです。

Clauss, J. A., & Blackford, J. U. (2012). Behavioral inhibition and risk for developing social anxiety disorder: a meta-analytic study. Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry, 51(10), 1066-1075. doi:10.1016/j.jaac.2012.08.002.

先行研究は乳幼児期に抑制的気質だと成長してから、金銭的な報酬課題で脳の報酬系(線条体)の活動が普通とは異なるということを示していました。それは特に自身の行為が報酬獲得の結果を左右すると思い込まされていた時に顕著(Bar-Haim et al., 2009)です。それだけでなく、乳幼児期の行動抑制と成長後の線条体の異常が合わさると、物質使用問題(薬物使用問題)が重篤になりやすく(Lahat et al., 2012)不安(親が評価)が高くなる(Pérez-Edgar et al., 2014)というように、近年は線条体の活動異常と精神的・行動的問題がつながっている可能性を示す研究がでてきました。

しかし、脳の報酬系は社会的交流・社会的相互作用にも関与しています。たとえば、マウスを被験体とした光遺伝学(オプトジェネティクス)の実験により、脳の報酬系(腹側被蓋野-側坐核)が社会的交流に因果的に関与していること(Gunaydin et al., 2014)が示されました。特に側坐核の、ドーパミン受容体であるD1受容体が重要で、この受容体を刺激すると社会的行動が増加するそうです(Gunaydin et al., 2014)。

しかし、先行研究では、金銭的報酬・罰に対する脳活動の異常性を調べたものばかりで、過去に抑制的気質だった人の脳が社会的報酬・罰に対する活動で異常を示すかどうかは調査されていませんでした。今回の論文はその問題に取り組んだ初めての研究になります。

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行動抑制(behavioral inhibition)が強い子供は新規で馴れていない物や人、状況に対して接近しようとせず、傍観する傾向にあります。メタ分析研究によれば、行動抑制は社会不安障害(社交不安障害)のリスクを7.59倍高めます(Clauss et al., 2012)。また、行動抑制は過剰不安障害(全般性不安障害)や恐怖症、回避性障害、分離不安障害、うつ病、自殺企図、アルコール問題、薬物使用問題、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のリスクを高めるという研究もあります。

*行動抑制(抑制的気質)とはハーバード大学のJerome Kagan名誉教授が考案した気質のことです。詳しくはこちらをご覧ください⇒行動抑制の概念 by Jerome Kagan

*Clauss et al.(2012)とは以下の文献のことです。

Clauss, J. A., & Blackford, J. U. (2012). Behavioral inhibition and risk for developing social anxiety disorder: a meta-analytic study. Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry, 51(10), 1066-1075.

しかし子どもの頃に抑制的気質であってもそのすべてが不安障害(特に社会不安障害)になるわけではありません。したがって、不安障害になるかどうかの分水嶺となる要因の特定が必要です。今回取り上げる論文もその1つで、ドーパミン受容体遺伝子多型と報酬課題における線条体(特に尾状核)の活動が乳幼児期の行動抑制を思春期以降の不安に導く因子であると主張しています。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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