薬物療法 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

今回は神経症傾向についての論文です。不安に関する論文ではありませんが、神経症傾向は抑うつや不安のリスクですし、なにより実験結果が興味深いのでとりあげることにします。なお、神経症傾向とはストレッサーに対して情動的に過敏に反応する傾向のことです。

*恥かしいことに、いままで神経症傾向を神経質傾向だとばかり思っていました。2つの言葉が性格心理学の世界で混在していることに最近気づいた次第です。私の手元にある東京大学の丹野義彦教授著『性格の心理―ビッグファイブと臨床からみたパーソナリティ(コンパクト新心理学ライブラリ)(サイエンス社)』では性格の5因子(ビッグファイブ)モデルの第4次元として神経症傾向(Neuroticism)という言葉を使っており、本記事ではそれにのっとって、神経症傾向と翻訳することにします。なお、性格の5因子モデルとは性格を5つの因子によって説明できるとする理論のことです。その5因子とは外向性、神経症傾向(情緒不安定性)、勤勉性、協調性、開放性です。丹野義彦教授は臨床心理士という肩書もお持ちのようです。

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オキシトシンは自閉症患者に鼻腔投与する研究報道が盛んにおこなわれています(あくまでも私の印象)。たとえば、東京大学の山末英典准教授、渡部喬光特任助教授(当時)、桑原斉助教授、八幡憲明特任助教授、高野陽介氏、岩白訓周氏、 夏堀龍暢氏、青木悠太氏、高尾英正特任講師、川久保友紀助教授、宮下保司教授、笠井清登教授、国立精神・神経センター精神保健研究所児童・思春期精神保健部の神尾陽子氏、日本大学の加藤進昌教授、阿部修教授による以下の論文がNHKで「東大のグループ 自閉症にホルモン投与で改善」、「鼻からオキシトシンをスプレー 自閉症がよくなった」、マイナビニュースで「自閉症の対人コミュニケーション障害はホルモン投与で改善できる!?」と盛んに報道されました。

Watanabe, T., Abe, O., Kuwabara, H., Yahata, N., Takano, Y., Iwashiro, N., Natsubori, T., Aoki, Y., Takao, H., Kawakubo, Y., Kamio, Y., Kato, N., Miyashita, Y., Kasai, K., & Yamasue, H. (2013). Mitigation of sociocommunicational deficits of autism through oxytocin-induced recovery of medial prefrontal activity: A randomized trial. JAMA Psychiatry. 71(2), 166-175. doi:10.1001/jamapsychiatry.2013.3181.

メディアで報道されたかどうかは知りませんが、福井大学子どものこころの発達研究センターの小坂浩隆特命准教授、佐藤真特任教授、友田明美教授、和田有司教授、福井大学医学部神経科精神科の石飛信助教授、浅野みずき特命准教授、福井県立大学の大森晶夫教授、金沢大学の棟居俊夫特任教授は自閉症スペクトラム障害患者の長期的なオキシトシン療法を事例として報告しています。

Kosaka, H., Munesue, T., Ishitobi, M., Asano, M., Omori, M., Sato, M., Tomoda, A., & Wada, Y. (2012). Long-term oxytocin administration improves social behaviors in a girl with autistic disorder. BMC Psychiatry, 12(110). doi:10.1186/1471-244X-12-110.

しかし、実際には自閉症だけオキシトシン服用が研究されているわけではありません。社会不安障害や統合失調症、境界性人格障害の患者へオキシトシン投与を実施した研究もあります(面倒なので実際の論文は示しません)。

今回はオキシトシン投与が幸福表情や怒り表情に対する接近行動を高めるかどうか検証した研究です。社会不安の高低による効果の違いも検証しています。

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どうやら、12週間のSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)服用で、社交不安障害(社会不安障害)の人の上側頭皮質と小脳が委縮するようです。

しかし、この論文には様々な問題が山積しており、今後の検証しだいで、結果が否定される可能性を孕んでいます。

Cassimjee, N., Fouche, J. P., Burnett, M., Lochner, C., Warwick, J., Dupont, P., Stein, D. J., Cloete, K. J., & Carey, P. D. (2010). Changes in regional brain volumes in social anxiety disorder following 12 weeks of treatment with escitalopram. Metabolic Brain Disease, 25, 369-374.

★概要

社交不安障害の人11人(平均年齢40.64歳:SDは11.74)が最終的なデータ解析で有効となりました。

なお、SDとは標準偏差(Standard Deviation)のことで、平均値からデータがどれぐらい散らばっているかを表す統計用語です。

SSRIのエスシタロプラム(レクサプロ)を毎日20mg、12週間服用してもらい、前後の脳容量をMRI(核磁気共鳴画像法)で計測したというシンプルな臨床試験です。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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